2018年11月11日、これからのものづくりを大田区・蒲田から発信するトークイベントシリーズ「ラウンドテーブル#03」が開催されました。
会場は元工場を活用した「ギャラリー南製作所」さんです。オーナーの水口さん夫妻は、築35年・先代が一代で築いた工場の佇まいをそのままに、写真展、コンサート、ワークショップなどに使える貸しギャラリーとして運営されています。そこかしこに工場だった頃の名残りを感じる空間にてRT#03スタートです。
まずは、大田の町工場文化をよく知る波田野哲二さん(共栄溶接)、高橋俊樹さん(東蒲機器製作所)のお二人から、お話を伺います。
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「仲間回しをアップデート」への共感
見えないけれどスゴイ技術
ネットワークすることが好循環を生む
「仲間回しをアップデート」への共感
「仲間回しをアップデート」への共感
波田野さんは町工場を営む家に生まれ、サラリーマンを経て下丸子にある共栄溶接に入社、ステンレスやアルミの溶接をおこなっている職人の方です。職人歴8年目でまだまだ若手、と表現されていました。
溶接の技術を身に着けていく過程の中で、他の工場と連携し、それぞれの技術を活かした製品を作れないだろうか、と考えていた時期があったという波田野さん。
「しかし自社製品を作っている会社もあるのですが、現実はアイデアやデザイン力のない零細企業がほとんどです。そういった人が集まって話し合える場所があったらいいなと思っていました。」
そんなときに出会ったのが、野原さんらが立ち上げた「おおたオープンファクトリー」だったそう。大田区内の町工場を一斉オープンし、普段は見られない仕事の現場にお客さんを迎え入れるイベントです。
波田野さんが初めて町工場として参加した時は、大田区の町工場文化「仲間まわし」を一般の人に体感してもらうべく、いくつかの工場を巡ってミニチュアのフライパンを作ってもらうという企画を行ったそうです。これが、お客さんだけでなく企画者の波田野さんにとってもほんとうに楽しい体験だったそうで、溶接工場での普段のお仕事と並行して、オープンファクトリーに積極的に参加していくキッカケになったといいます。
オープンファクトリーでは@カマタのメンバーとも初めて出会ったそう。職人さんが思いもよらなかった工具の使い方を考案したり、デザイナーを連れて工場を見学して交流が生まれたりと、@カマタのコミュニティとつながり、新しい発見があったといいます。
「その中でもわたしは、(@カマタの)松田さんの『仲間回しをアップデートする』という話にとても共感しています。頭を柔らかくしてお手伝いができたらなと思います。」
と話しました。
見えないけれどスゴイ技術
東蒲(とうほう)機器製作所の高橋さんは、同じく金属加工でも「削る」ことが専門です。「金属の切削には2種類あって、工具を回して品物を固定して削っていく旋削(せんさく)と工具を回して品物を削るミルのふたつ。うちは両方ともできます。」と紹介。昭和28年創業の65年、4代続く鉄切削工場なのだそうです。
建物が揺れて崩れないように基礎に打つアンカーという部品を製造していて、新国立競技場、大田体育館、横浜ベイブリッジといった名だたる建築物・構造物の基礎に東蒲機器製作所の技術が隠されているそう。
また、東京スカイツリーの頂上の電波塔を持ち上げるジャッキや、ナゴヤドームの屋根を持ち上げるジャッキにも技術協力。さらに、鉄道車両用のダンパーとして製造したものは成田エクスプレス、あずさ、四季島といった車両に使われているそうです。す、すごい・・
「みなさんが知るいろんなものの『アレ』をうちで作っているんです。うちだけじゃなくて、大田区の町工場の製品はみんなそうですね。ですが部品なので最後には覆われちゃって見えない。それから守秘義務の関係でほんとうは見せたいのに部品や図面は見せられないんですね。」
と話す高橋さんは、それでも「技術を知ってもらいたい」という思いで下町ボブスレーに参画したそうです。
ネットワークすることが好循環を生む
実は下町ボブスレーが始まった背景には、大田区内の工場数の減少もあったのだとか。「(ピーク時に)9000社あったころは隣が町工場だったのでちょっとドリル借りたり等できたのですが、(現状の)3000社になると点在なんですね。工場同士のつながりを維持していくために、YMクラブとその親会の大田工業連合会で、どうしていこうかと考えて集まったのが、下町ボブスレーの始まりです。」
現在200社ほどの会社が集まり、技術を出し合い、2022年の冬季北京オリンピックを目指しているとのこと。現在、高橋さんはボブスレー製作の統括担当者としてチームを引っ張る存在なのだそうです。これまでの活動の中で、ネットワークすることが好循環を生み出すと身をもって証明されている様子が伺えました。
テキスト:藤末萌、写真:池ノ谷侑花(ゆかい)
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